小5・小6の息子が「言うこと聞かない」—実はそれ、高学年男子の脳が成長しているサインです

子育て

高学年男子の頭の中 〜親には見えない成長を知るシリーズ〜 第1回

※このシリーズは、高学年の息子を持つ母親が日常で疑問に思ったことについて、本や動画で学んだこと、AIと対話しながら自分なりに理解したことを、記録していくためのブログです。また、同じように悩んでいる親御さんがいらっしゃれば、少しでも参考になればと共有しています。

① こんな困りごと

「宿題やった?」

「……あとで。」

「あとでって、さっきもあとでって言ったよね?」

「うるさいな、わかってるよ!」

——あなたの家でも、こんなやりとり、ありませんか?

小5や小6になった頃から、それまで素直に「はい」と言っていた息子が、突然こういう態度をとるようになる。言うことを聞かない。口数が減る。反抗的な言葉が増える。ちょっとしたことでイライラする。部屋に閉じこもる。

「反抗期かな」と思うかもしれません。
「私の育て方が悪かったのかも」と不安になるかもしれません。
「このまま中学になったらどうなるの」と不安になるかもしれません。

でも、少し待ってください。

その「言うこと聞かない」の裏で、あなたの息子の頭の中では、大人になるための準備が静かに始まっています。

この記事では、高学年男子の「困った行動」の裏で何が起きているのかを、脳と心の発達の視点から一緒に見ていきましょう。


② 子どもの頭の中

「うるさいな、わかってるよ」

この言葉を口にした時、息子の頭の中では何が起きているのでしょう。

実は、子ども自身もよくわかっていません。

「やらなきゃいけないのはわかっている。でも、今すぐやりたくない。お母さんに言われると、なぜか余計にやりたくなくなる。でも、その理由もうまく説明できない。だから”うるさい”と言ってしまう。」

——これが、高学年男子の心の中です。

言うことを聞かないのは、「聞く耳を持たない」わけではありません。 言われたことは理解している。でも、自分の中にある「自分で決めたい」という気持ちと、「まだ親に甘えたい」という気持ちがぶつかり合って、うまく行動に移せない。その結果として、反抗的な態度が表面に出てしまうのです。

つまり、「言うこと聞かない」の裏にあるのは、「自分で決めたいのに、まだ決めきれない」もどかしさです。


③ 脳・発達では何が起きている?

高学年男子の変化は、実は脳の変化と深く関係しているようです。

ブレーキが弱いまま、アクセルだけ強くなる

小学校高学年(およそ9歳〜12歳)は、医学・心理学では「プレ思春期」と呼ばれる時期で、本格的な思春期に入る前の、いわば「助走期間」のようです。

日本では平均して9歳頃から、テストステロン(男性ホルモン)の微量分泌が始まり、これと同時に、脳の中で次のような変化が起きているようです。

アクセル役:扁桃体(へんとうたい)

扁桃体は、感情をつかさどる脳の部位です。思春期に近づくと、この扁桃体の働きが活発になります。不安、恐怖、怒り——感情の振れ幅が大きくなります。些細なことでイライラしたり、突然むかついたりするのは、この扁桃体の活性化が原因の一つです。

ブレーキ役:前頭前野(ぜんとうぜんや)

前頭前野は、衝動を抑えたり、理性で判断したりする部位です。しかし、ここが問題です——前頭前野は、脳の中で最も遅く成熟する部位なのです。20代半ばまで発達し続けると言われています。

つまり、高学年男子の脳はこういう状態となるようです。

感情のアクセルは強くなっているのに、それを抑えるブレーキがまだ未発達

車で言えば、パワーアップしたエンジンに、まだ古いブレーキがついている状態です。スピードは出るけど、止まれない。だから、感情が先走り、後から「なんであんなこと言っちゃったんだろう」と後悔することになる。

これが、「言うこと聞かない」「すぐイライラする」の正体です。わがままではなく、脳の発達段階なのです。

脳以外にも、心の面でも大きな変化が起きています。

「10歳の壁」と心の変化

発達心理学では、10歳前後を「10歳の壁」と呼ぶことがあります。法政大学の渡辺弥生教授は、この時期の子どもについて次のように説明しています。

低学年までは「自分は何でもできる」という万能感を持ちやすく、親の「頑張ってね」「あなたならできるよ」という言葉を素直に受け止められます。しかし、10歳前後になると、周りの友だちと自分を客観的に比較できるようになり、「自分はそれほどでもないかもしれない」と感じるようになります。Benesse「10歳の壁」

同時に、思考の仕方も変化します。低学年までは「目の前の具体的なこと」をシンプルに考えていたのが、高学年になると「友情って何?」「正しいってどういうこと?」といった抽象的な概念を考え始めます。

この変化は素晴らしい成長です。でも、子どもにとっては大きな負担でもあります。だって、今まで「自分はできる」と信じていた世界が、「自分にはできないこともある」という現実に書き換わるのですから。

だからこそ、10歳前後の子どもは、自信を失ったり、劣等感を抱いたり、イライラしやすくなったりするのです。それは問題ではなく、成長の通過点とのことです。

「反抗」と「甘え」が同時に存在する理由

高学年男子のもう一つの特徴は、反抗的な態度と甘えたい気持ちが同時に存在することです。

「うるせえ」と言った翌日に、「ねえ、ハグして」と言ってくる。
さっきまで部屋に閉じこもっていたのに、夜になるとリビングに出てきて、黙って隣に座る。

この矛盾した行動は、子ども自身も制御できていません。

「もう子ども扱いされたくない」という自立への欲求と、「まだまだ親に甘えたい」という依存の欲求が、同時に存在しているからです。自分でもどちらが本当の気持ちなのかわからない。だから、行動がチグハグになる。

これもまた、成長の証です。自立と依存の間で揺れているからこそ、大人への一歩を踏み出しているのです。


④ 親からはこう見える

ここまで読んで、「なるほど、脳の変化なんだ」と納得できたでしょうか。

でも、現実の毎日はそう簡単ではありませんよね。

朝、何度起こしても起きない。
宿題をやるとと言って、ゲームを続けている。
「今日学校どうだった?」「別に。」
片付けろと言っても、見て見ぬふりをされる。

親から見れば、こう見えます。

「あの子、どうしちゃったの?」

そして、ついこう思ってしまう。

「私の育て方が悪かったのかも」「このままじゃ中学で大変になる」「どこで間違えたんだろう」

これは、親として当然の感情です。 息子の変化を目の当たりにして、不安になるのは当然のことです。責めないでください。

でも、ここで一つ、視点を変えてみましょう。

親から見えるのは「外側の行動」だけです。言うこと聞かない、反抗する、口を閉じる——これらはすべて、外から見える姿です。

外からは見えないものがあります。

脳の中で起きている変化。 感情の波に翻弄されている本人の感覚。「自分で決めたい」という意欲の芽生え。友だちとの比較で傷ついた自尊心。甘えたいけど甘えられないもどかしさ。

これらは、外からは一切見えません。

だから親は、「行動が変わった」ことだけを見て、「子どもが変わってしまった」と錯覚しがちなのです。

でも、本当は——子どもは変わってしまったのではなく、成長している最中なのです。


⑤ 実は本人はこう感じている

ここで、息子本人の気持ちに寄り添ってみましょう。

高学年男子は、自分の気持ちを言葉にするのが苦手です。それは、前頭前野(ブレーキ役)が未発達だから、感情を言語化する回路がまだうまく働かないからです。

だから、本人も自分の気持ちがよくわかっていません。

でも、もし本人が言葉にできたら、こんな風に言うかもしれません。

「お母さんに言われると、なんかむかつく。やらなきゃいけないのはわかってる。でも、自分で決めたい。自分でやりたい。言われた通りにやったら、自分でやったことにならない気がして。」

「友だちと比べちゃう。あいつの方が勉強できる、運動できる、モテる。自分には何もない気がする。お母さんが”大丈夫よ”って言っても、全然大丈夫じゃない。」

「イライラする。なんでかわからないけど、イライラする。いつもなら気にならないことが、今日はすごく気になる。」

「甘えたい時もある。でも、今さら甘えたらダメな気がする。だから、怒って隠す。」

——これが、高学年男子的內面です。

反抗しているように見えて、実は自分自身と戦っています。

言うこと聞かないのは、親を困らせたいからではありません。自分の気持ちをうまく処理できず、行動に移せないからです。


⑥ 親はどう接するといい?

第1回の今は、具体的なテクニックより、
まず「見方」を一つ変えてみましょう。

それは——

「反抗期」ではなく「成長期」と捉えること。

言葉を変えるだけで、見え方が変わります。

「反抗期だから仕方ない」と我慢するのではなく、
「成長期だからこういう時期があるんだ」と受け止める。

我慢と受け止めは違います。
我慢は「つらいけど耐える」、
受け止めは「これは成長の証だ」と理解することです。

この一つの視点転換が、
このシリーズを通じて一番大切な土台になります。

具体的な対応方法は、次回以降、一つずつ丁寧にお伝えします。


⑦ これからできること

最後に、今日からできる小さな一歩を一つだけ。

  • 「10秒待つ」をやってみる

子どもに何か言おうとした時、言う前に10秒待ってみてください。

「宿題やった?」と言いたくなったら、10秒。
「片付けなさい」と言いたくなったら、10秒。

その10秒で、こう考えてみてください。

「いま、息子の頭の中はアクセル全開でブレーキがきかない状態。言ったところで、余計に反抗するだけ。」

そして、10秒経ったら、言い方を変えてみてください。

「宿題やった?」→「宿題、いつやる予定?」
「片付けなさい」→「片付け、いつごろできそう?」

指示を問いかけに変える。 それだけで、高学年男子の「自分で決めたい」という気持ちに応えることができます。

今日、一度だけ、試してみてください。


おわりに

あなたの息子は今、大人への助走を始めています。

言うこと聞かない、反抗する、口を閉じる——それは親には見えにくいですが、確かに成長のサインです。

脳が変わっている。心が揺れている。体が大人に向かっている。

「困った」の裏には、必ず「育っている」があります。

このシリーズでは、高学年男子の「困った行動」の裏にある成長を、一つずつ見つけていきます。次回は、「なぜ急に反抗するのか——そのタイミングとメカニズム」を取り上げます。

お楽しみに。


📖 この記事の参考情報


高学年男子の頭の中 〜親には見えない成長を知るシリーズ〜
第1回:小5・小6の息子が「言うこと聞かない」——実はそれ、脳が成長するサイン(本次)
第2回:なぜ急に反抗するのか——そのタイミングとメカニズム(次回予定)

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