高学年男子が「俺はバカだ」と吐く—10歳の壁と劣等感の正体

子育て

※このシリーズは、専門家ではなく親が本・動画・AI対話を通じて理解した内容を共有するものです。このシリーズについて


高学年男子の頭の中 〜小5・小6の息子の成長を知るシリーズ〜 第3回

第1回はこちら:小5・小6の息子が「言うこと聞かない」——実はそれ、高学年男子の脳が成長しているサインです
第2回はこちら:高学年男子が突然「キレる」——その瞬間、脳で起きていること


① こんな困りごと

「俺はバカだ」

ある日、息子がぽつりと言いました。

それまで何事にも「オレ、天才だ!」と飛び込んでいった子が、急にこう言う。

親としては、「そんなことないよ!誰も得意不得意あるから!」と伝えました。

でも——言っても、届かない。

「前向きになろうよ」と励ましても、あまり効果なし。

「じゃあどうすればいいの?」と親は途方に暮れる。

今まで素直に褒め言葉を受け取っていた子が、急に自分を低く評価し始める。励ましても届かない。この「届かなさ」に、親は不安になります。

「うちの子、自信をなくしちゃったのかな」「このまま大丈夫かな」

でも、少し待ってください。

その「自分にはない」という感覚は、実は子どもが初めて「自分を客観的に見る」ことができるようになった証みたいなのです。


② 子どもの頭の中

「俺はバカだ」と言った時、息子の頭の中で何が起きているのでしょう。

実は、本人もその気持ちがどこから来ているのか、完全にはわかっていないみたいです。

「なんか、みんながすごく見える。勉強できるやつ、運動できるやつ、モテるやつ。オレは……何もない気がする。前は気にならなかったのに、最近気になって仕方ない。」

——これが、10歳前後の子どもの心の中のようです。

前は「自分は何でもできる」と信じていた。でも、ある日突然、友だちと自分を比べてしまう。「あいつはできるのに、自分はできない」。そのギャップが、劣等感として心に落ちてくる。

言いたくて言っているわけではなさそうです。気づいたら比べていた——それが、この時期の子どもの正直な感覚のようです。


③ 脳・発達では何が起きている?

この「比べ始める」現象には、発達心理学で「10歳の壁」と呼ばれる明確な理由があるそうです。本や記事で調べていて、とても腑に落ちたことを共有します。

「万能感」から「客観視」への切り替わり

発達心理学で有名な法政大学の渡辺弥生教授の説明によると、小学校低学年までは子どもが「自分は何でもできる」という万能感を持ちやすいそうです。親の「頑張ってね」「あなたならできるよ」という言葉を素直に受け止められる時期です。

しかし、10歳前後になると、周りの友だちと自分を客観的に比較できるようになり、「自分はそれほどでもないかもしれない」と感じるようになるそうです。(Benesse「10歳の壁」

つまり、「自分には才能がない」と言えるようになったということは——「自分を客観的に見る力」が育ったということみたいです。

これは、ものすごい成長だと思います。

大人になっても「自分は何でもできる」という根拠のない万能感を抱えたままでは、社会にスムーズに適応するのは難しいと渡辺教授は指摘されています。自分の弱点に気づけるということは、現実をありのままに見られるようになったという証拠。

だから、「自分には才能がない」と言えるのは、成長の大きな通過点なんだと思います。

「具体的思考」から「抽象的思考」へのシフト

もう一つ、重要な変化があるそうです。

低学年までは、目の前の具体的なことをシンプルに考えていました。算数なら「リンゴが3個」のような具体物で理解できた。友だち関係も、目の前の友だちと遊ぶことだけを考えていればよかった。

でも、10歳前後になると、抽象的な思考ができるようになるそうです。(Benesse「10歳の壁」

「友情って何?」「正しいってどういうこと?」「才能って何?」——こういう抽象的な概念を考え始める。同時に、算数では記号を使った数式が頻出するようになる。学習の抽象性が一気に高まります。

でも、この抽象的思考へのシフトは、スムーズにはいかないことが多いそうです。ある日突然切り替わるわけではないので、「なんか難しくなった」「わからない」とつまずくケースが少なくない。勉強が難しくなったと感じるのは、子どものせいではなく、脳の発達段階の副産物みたいです。

同時に、他者からの評価にも敏感になるそうです。「他者意識」が発達し、他人との比較を通じて自分を認識するようになるため、自己評価や自尊心が揺らぎやすくなるらしいです。(KODOMO MANABI LABO

なぜ親のフォローが届かないのか

ここが一番のポイントです。

親が「大丈夫よ」「あなたはがんばってるよ」とフォローしても届かない理由は、信頼関係の問題ではなく、情報源の変化だそうです。

低学年までは、親の言葉が子どもの世界の「一番の情報源」でした。親が「あなたはできるよ」と言えば、それが真実だった。

しかし、10歳前後になると、友だちの存在が親よりも大きくなる時期に入るそうです。友だちからの評価の方が、親の励ましよりも重くなる。(KODOMO MANABI LABO

だから、親が「大丈夫よ」と言っても、「お母さんはそう言ってくれるけど、友だちがそうは見てない」となる。親の励ましが届かないのは、親の愛が足りないからではありません。子どもの世界が広がり、親以外の評価軸が入ってきたからみたいです。

これもまた、成長の証だと思います。


④ 親からはこう見える

自信をなくした息子を見て、親はこう感じます。

「うちの子、自信をなくしちゃった」
「どうにかして励ましてあげたい」
「でも言っても届かない……」

そして、ついこう言ってしまう。

「そんなことないよ!あなただって十分すごいよ!」
「前向きに考えなよ!」
「自信を持ちなさい!」

気持ちはわかります。我が子が自分を低く見ているのを見るのは、親として辛いです。私も何度もそう言いました。

でも、ここで一つ、視点を変えてみましょう。

親から見えるのは「自信をなくした姿」です。落ち込んでいる、自分を下に見ている、励ましても届かない。

でも、その裏で——「自分を客観的に見る力」が育っているのだと思います。他者と比較できる力。自分の弱点に気づける力。現実をありのままに見られる力。

これらは、大人になるために必要な力だと思います。

親から見れば「自信をなくした」ように見えますが、子どもから見れば——初めて自分を正直に見つめたのかもしれません。その正直さに、まだ慣れていないだけなのだと思います。


⑤ 実は本人はこう感じている

もし、自信をなくした息子が言葉にできたら、こんな風に言うかもしれません。

「自分には何もない気がする。前は気にならなかったのに、最近みんなと比べちゃう。あいつは勉強できる、運動できる、モテる。オレは……?」

「お母さんは”大丈夫よ”って言ってくれるけど、それが逆に辛い。お母さんの目だからそう見えるだけで、友だちの目は違う気がする。」

「別に褒めてほしいわけじゃないんだよな。ただ……自分がどこにいるのかわからないだけ。」

「前は何も考えずに走ってられた。今は、走ってる最中に”自分は速いのかな”って気になっちゃう。それが重い。」

——これが、10歳前後の子どもの内面だとしたら。

自信をなくしているように見えて、実は自分の居場所を探しているのかもしれません。

「自分がどこにいるのかわからない」——これは迷子になったのではなく、初めて地図を持った状態なのだと思います。地図を持ったことで、自分がどこにいるかが気になり始めた。まだ地図の読み方がわからないから不安なだけで、地図を持てたこと自体は成長なんだと思います。


⑥ 親はどう接するといい?

今回は、具体的なテクニックよりも、一つの視点転換を共有したいと思います。

それは——

「自信をなくした」ではなく「現実が見えるようになった」と捉えること。

「自信をなくした」と見るか、「現実が見えるようになった」と見るかで、親の言葉が変わる気がします。

「自信をなくした」と見れば、「自信を持ちなさい」と言いたくなります。でも、この時期の子どもに「自信を持ちなさい」と言っても、プレッシャーになるだけみたいです。持てるならもう持てると思います。

「現実が見えるようになった」と見れば、代わりにこう言えるかもしれません。

「自分の弱いところが見えるようになったんだね。それは、大人に近づいたってことだよ。」

あるいは、何も言わずにただそばにいる、という選択もあります。励ます言葉が見つからない時は、無理に言葉にしなくていい。「何も言えない」という気持ちを、ただそばにいることで伝える。それも一つの接し方だと思います。

具体的な対応方法——どう声をかけるか、どう自己肯定感を支えるか——は、第4部「親との関わり」で丁寧に共有したいと思います。

今はまず、「自信をなくした」ではなく「現実が見えるようになった」という一つの視点を持ってみてください。


⑦ これからできること

今日からできる小さな一歩。

それは——

「比べること」自体を否定しないこと。

子どもが「あいつはすごい、オレはダメだ」と言った時、反射的に「そんなことないよ!」と言いたくなる気持ちを、少しだけ抑えてみてください。

代わりに、こう聞いてみてください。

「そうなんだ。何がすごいって思ったの?」

「そんなことないよ」は、子どもの比較を打ち消す言葉です。「何がすごいって思ったの?」は、子どもの比較を受け止める言葉です。

比べていること自体は悪いことではありません。客観視する力が育った証拠だと思います。否定せずに、まずは「そうなんだ」と受け止める。それだけで、子どもは「比べちゃダメなのかな」というプレッシャーから解放される気がします。

今日、一度だけ、試してみてください。


おわりに

「自分には才能がない」と言えるようになった息子は、迷子になったのではありません。

初めて地図を持ったのです。

まだ地図の読み方がわからない。自分がどこにいるかわからない。だから不安になる。でも、地図を持てたこと自体は、確かな成長だと思います。

親の励ましが届かないのは、親の愛が足りないからではありません。子どもの世界が広がり、親以外の評価軸が入ってきたから。それもまた、成長の証だと思います。

次回は、もう一つの重要な変化を取り上げます。「体が変わるから心も揺れる——見えない二次性徴の影響」です。

お楽しみに。


📖 この記事の参考情報


高学年男子の頭の中 〜小5・小6の息子の成長を知るシリーズ〜
第1回:小5・小6の息子が「言うこと聞かない」——実はそれ、脳が成長するサイン
第2回:高学年男子が突然「キレる」——その瞬間、脳で起きていること
第3回:「10歳の壁」——友だちと比べ始めた時、心で起きていること(本次)
第4回:体が変わるから心も揺れる——見えない二次性徴の影響(次回予定)

コメント

タイトルとURLをコピーしました