売上高・利益ともに過去最高、それでも株価は最高値から9%安

投資

2026年7月16日、台湾積体電路製造(TSMC)が第2四半期決算を発表した。すでに7月13日に公表された速報値によれば、4〜6月期の売上高は前年同期比36%増の約1兆2703億台湾ドル(約396億ドル)——過去最高を記録し、会社自身が示したガイダンス(390億〜402億ドル)の上限付近で着地した。

純利益も市場予想(LSEG集計・18アナリスト)で前年同期比59%増の約6326億台湾ドル、5四半期連続の過去最高益が見込まれる。第1四半期の粗利益率は66.2%に達し、第2四半期も65.5%〜67.5%のガイダンスを示している。製造業で66%超の粗利益率は、Appleなどのブランド企業に匹敵する異例の高水準だ。

それでも、TSMCの株価は過去最高値から約9%下落したままだ。Q2の4〜6月期に39.9%の急上昇を記録したものの、高値からは一歩引いた位置にある。「業績は最高、でも株価がついてこない」——この乖離の背景には、3つの構造的要因が潜んでいる。

要因1:AI企業間の価格競争の激化

最大の懸念は、AI需要の「質」が変わりつつある点だ。AIモデル利用量データ(OpenRouter調べ)によると、中国DeepSeekのシェアが1月の9.1%から6月には18.1%へ倍増する一方、Googleは24.6%から10.7%へ急落した。低価格モデルの台頭により、AI開発企業間で価格競争が始まっている。価格競争が収益を圧迫すれば、ハイパースケーラーの設備投資ペースが鈍化し、TSMCへの発注量に影響しかねない。

要因2:設備投資の回収リスク

アマゾン、マイクロソフト、アルファベット、メタの大手4社が2026年に投じる設備投資額は前年比73.2%増の7100億ドル(約142兆円)に達する見通しだ。だが、資金調達のための社債発行により、4社の長期負債残高は前年同期比60%増の6200億ドルに膨らんでいる。投資家は「この莫大な投資が回収できるのか」を疑い始めており、TSMC経営陣が慎重なガイダンスを出せば、設備投資見直しの連想から半導体株全体が売られるリスクがある。

要因3:バリュエーションの織り込み済み

TSMCの2026年通期見通しは「30%超の増収」、設備投資も520億〜560億ドルのレンジから580億ドルへ further増額の観測が浮上している。ウォール街は「強い買い」を推奨し、目標株価は最高で3800台湾ドルに達している。しかし、好業績がすでに株価に織り込まれているため、決算が予想通りでも「新材料」が出なければ上値が重い構造だ。直近4四半期のアナリスト予想に対するプラスサプライズの平均は8.34%——つまり、予想を「大きく」上回らなければ株価の突破口は開かない。

今後の注目ポイント:C.C. Wei CEOの「一言」に賭けがかかる

本日の決算説明会で最も注目されるのは、魏哲家(C.C. Wei)CEOが示す第3四半期ガイダンスとAI需要に関するコメントだ。市場は以下を注視している。

  • 第3四半期ガイダンス:7〜9月期の売上高見通しが市場予想を上回るか
  • 通期見通しの再上方修正:30%超からさらに引き上げられるか
  • 設備投資額:580億ドルへの増額が正式に示されるか
  • CoWoS先端パッケージング:最大のボトルネック解消の進捗
  • 2nm量産計画:2027年下半期開始に向けた準備状況

TSMCの決算は、もはや単一企業の業績発表ではない。世界中のAI投資の「温度計」であり、半導体サプライチェーン全体の「試金石」だ。過去最高の数字を出しても株価が動かないとすれば、市場が問うているのは「今」の強さではなく「明日」の持続性なのだ。

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